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2023.08.19

コラム

アグリコールラム造りは畑からはじまる

真夏の太陽が照りつけるサトウキビ畑で鎌を片手にひたすら雑草を刈り、サトウキビの根元に寄せて行くのがこの時期のペナシュール房総の朝の作業。

自然農法で言うところの雑草マルチみたいなもので、刈った雑草で次なる雑草を防ぎつつサトウキビの肥料となる効果も狙っているのですが、分げつしているサトウキビを刈ってしまわない様に手刈りが必須になるので、かなりの重労働。1日やると体重が1〜2kg減るのでダイエットしてる方はぜひBOSOパイレーツにご参加ください。

僕らがこんな面倒な作業を続けているのには理由があって、これはお酒造りのメカニズムに遡ることになりますが、その辺はできるだけシンプルに。

すべてのお酒は、原材料中の糖を微生物である「酵母」が食べてアルコールと二酸化炭素に分解することで生まれます。
この酵母という微生物は様々な植物に付着していて同じ種族であっても生息する風土や植物などの環境によって様々な個性を持ち、その個性ができあがるお酒の香りやテイストに違いをもたらすひとつの大きな要因となります。

現代のお酒造りにおいては、この酵母の中でもひときわ優秀でそれぞれのお酒に適した種を純粋培養した製品酵母を使用するのが主流であって、それによって世界中で安定的に美味しいお酒が造られています。

ペナシュール房総でも製品として培養された酵母をメインに使用していますが、ことアグリコールラムにおいてはほぼ酵母を加えない自然発酵に近い形を目指して製造を行っています。
蒸留前のアルコール生成、いわゆる醪(もろみ)の段階で自社農園でサトウキビと共存していた酵母やその他の微生物の力でアルコール発酵を行う方法で、それがアグリコールラム特有の複雑で奥行きのあるフレーバーや味わいに影響すると考えています。

しかしながら、これがまた簡単なことではなく、畑にいる微生物の中には酵母のアルコール発酵を邪魔する奴らも多くいて酵母優位になるように仕向けないとせっかく搾った大量のサトウキビジュースが腐造として廃棄されることにもなりかねず、実際にそんなこともあり愕然とした経験もあります。

僕らが提唱している「Boso Environmental Utilization Agriculture- 房総環境活用農法-」は、この自然発酵をスムーズに行えるように、サトウキビだけではなく畑に共存する酵母をはじめとする微生物をできるだけ良いラムになる様に育んで行くことを目的とする農法です。

正直言って、サトウキビ生産を始めた当初は有機栽培とか無農薬とかにそれほど興味はなかったし、糖度が高く大きなサトウキビを育てるためだけなら化学肥料や農薬を使うことは今でも否定はしないし、有機認定なるシステムのやたらにお金のかかるやり方には辟易している部分もあります。

目に見えない微生物を意識して、実際に畑を発酵に適した環境に育んでいくのは正に暗中模索なんですが、「BOSOにしかできない美味しいアグリコールラム」という目標を意識しながら考えると色々なアイデアやヒントが生まれて来るし、それを吟味して実践しながら環境を育んで行くのが「僕らのビオディナミ」でもあり「南房総のテロワール」を生み出すことにつながると考えています。

農薬や化学肥料を使用しないのは土壌を整え微生物の生きやすい環境を作るためだし、冒頭に書いた雑草マルチも雑草にいる微生物さえも発酵に役立ててみたいというイメージを持ってやっています。
さらにラム製造において出る蒸留廃液を畑に散布して土壌のPHを調整したり、醪の底に残る不活性酵母を畑にリリースしてラム用の酵母が畑とサトウキビで増殖しないかななんて考えたり、海に打ち上がる海藻を畑にすきこんでミネラル補給や海藻酵母の働きを目論んだり...etc.

良いか悪いかは一応考えるけど、とりあえず僕らの持つ環境を目一杯、畑やサトウキビに与えて時間をかけながらラム専用のサトウキビが南房総のテロワールを充分に吸収して世界のどこにもないアグリコールラムとして生まれ変わるために畑づくりをしていくのが、僕らの房総環境活用農法です。

目指す環境を作り上げるには、これから何年かかるかもわからないし大失敗することもあるかもしれませんが「アグリコールラム造りは畑からはじまる」という信念を忘れずに少しずつ進化して、その進化をラムを通じてたくさんのラムファン、お酒ファンの方々と共有していけたらと思っています。

ようやく初めての「BOSO Rhum Agricole blanc Soleil 太陽」を皆さまにお届けすることができました。
まだまだ未熟さを感じる仕上がりかもしれませんが、僕らのこんな思いや取り組みを考えながら、また改めてテイスティングしていただき来年、再来年のSoleilに期待を抱いていただけたら幸いです。

そしてくどいようですが、このコラムを読んで真夏の草刈りや農作業に興味を持った方、ぜひご連絡ください。